和歌劇作品紹介
[第一部]スサノヲの命とオオナムチ
昔、出雲の大国という里に、オオナムチという少年がいた。オオナムチは、早く大人の仲間に入れてもらいたかったが、仲々その願いは叶わなかった。そこでオオナムチは、かつての出雲の国の主で、根の国に隠居したスサノヲの命の所に相談に行くことにした。
根の国に着いたオオナムチは、スサノヲの娘のスセリ姫と一目で恋に落ちたが、それを快く思わないスサノヲの命は、スセリ姫にオオナムチの悪口の歌を歌い、オオナムチの難しい試練を与えた。しかし、オオナムチはスセリ姫の助けを得てその試練を乗り越え、スサノヲの命をうち負かして、スセリ姫と共に脱出した。
スサノヲの命はくやしがると同時に、成長したオオナムチを祝う歌を歌った。そしてオオナムチは、鉄の農具で国を豊かにし、鉄の剣で国々を平定し、八千鉾の神と称えられた。
[第二部]オオナムチと越の沼河姫
出雲の国の主となったオオナムチは、越の国に沼河姫という麗しい姫がいると聞いて、船に乗って越の国に出かけていった。そしてオオナムチは、夜、沼河姫の所に求婚に行ったが、夜明けが近づいても家の中に入れてもらえないため、オオナムチは怒って歌を歌ったが、沼河姫は「新婚初夜には魔物が現れるので、その夜は男女が床を共にしてはいけない」という言い伝えを話し、その夜のオオナムチの求婚を断る歌を歌った。
そして次の日の夜、二人は結ばれた。
今から数千年前、日本で稲を栽培し鉄の道具を使うことが始まりましたが、それを日本中に教えて廻ったオオナムチという人がいました。出雲の国なる大国の里に生まれたオオナムチは、大きくなっても引っ込み思案な性格だったためか、里の若者たちの仲間に入れてもらえず、むしろいじめられてばかりいました。そこで、オオナムチの母は、スサノヲという、朝鮮半島から渡って来て何か特別な力を持つ人物の所にオオナムチを遣り、鍛え直してもらおうとしました。
オオナムチは、スサノヲが与えた試練を乗り越えただけではなく、スサノヲの持っていた金属を加工する技術を受け継ぎ、鉄を造る新たな技術を編み出しました。そしてオオナムチは出雲の国の主となり、鉄の技術によって、出雲の国を稔り豊かな国に育て上げました。
そしてオオナムチは、他の国に鉄の技術を教える代わりに自らへの服従を誓わせ、出雲の国の勢力を増そうとしました。そして、未だ鉄を使っていない、越の国に出掛けました。越の国なる沼河という土地を治める女王・沼河姫の宮殿に着いたオオナムチは、夜に男が恋する女性の処に忍び込むという自らの国の習慣に従い、夜中、沼河姫の部屋の前で待ちましたが、姫は中に入れてくれません。オオナムチは怒りますが、姫は、自らの国の風習では、新婚初夜に男女が床を共にしてはいけないことを説明し、翌日の夜、二人は結ばれました。
この様にして日本中を巡り歩き、稲作と鉄の技術を広めたオオナムチを、後世の人は語り継ぎ、その業績を称えるために、大きな社を造ってお祀りしました。