セミナーレポート

グロトリアン―シュタインヴェッヒの秘密

グロトリアンのピアノが3台そろいました。年代もモデルも違っていますが、ある共通するものは時代を超えて守られています。その秘密に迫りました。

■グロトリアン-シュタインヴェッヒの歴史

スタインウェイの歴史にも密接に関連しているグロトリアン。
 
1835年ヘンリースタインヴィッヒはドイツの工場でその弟子のグロトリアンと共に「スタインヴィッヒ・ナッハ・ホルゲル」という2台のピアノを完成させました。1870年ごろにはクララシューマンが愛用したとしても有名。現在は北ドイツのブラウンシュバイクで50人程度の職人で作られています。

 
 
 

■雑音と楽音

ピアノ音は弦などの振動の音程のある楽音と、雑音があります。避けて通れないハンマーが弦を叩くときの衝撃音です。これまでも違和感なく聞かせる技がグロトリアン-シュタインヴェッヒにはあるのです。
 

■他のピアノは?

うたまくらならではの企画です。他の一流メーカーの構造と比べることができます。今回はベヒシュタインと比べてみました。

■伝えていくものと変化するもの

第二次世界大戦を戦争をはさんで40年という時間の差は、この80年前のものと40年前のグロトリアンからは感じ取れませんでした。構造の変化はあるにせよ、守るべきものはしっかりと伝え続けられ、排除できるものは形を変えてもっと簡潔になっていきました。しかし、40年前と現在の廉価版ではかなり意味が違ってきています。

 

■グロトリアンの過去と現在

170年たってどれだけのことが伝え続けられているのでしょうか。時代の変化に企業もついていかなければ終わって止まってしまいます。どれだけ良いものを造っていても続かなければ意味が無くなってしまいます。永遠の課題かもしれません。
 
グロトリアン一族から経営権が離れていってしまったことは寂しいことですが、何を伝え続けなければいけないかをわかっている人間がヨーロッパでも日本でもいます。
 

■良い楽器とは

これらのグロトリアンを見て感じたことは一生懸命作られたものでも、管理次第でどれだけ持つかが決まって、次の世代へと渡していけるものは技術者との二人三脚が本当に必要だと思います。

お越しいただいた方から感想をいただきました。

「グロトリアン」という、一流メーカーとして名が通っている事には意味があったと改めて思いました。部品と弦の打撃音まで分析されているなんてはじめて知りました。また、楽音や雑音といった分類のお話もはじめてです。部品の一つ一つ、細かい見えないこだわりが積み重ねられて綺麗な響きが生まれているという事は本当に凄い事だと思います。私は家でグロトリアンを家族の様に愛用していますが、今回の企画に参加できて良かったです。これからもずっとピアノと付き合っていきたいと思います。 (K.I)
 
ピアノの製造過程で雑音が意識されて、それを調整する人がいたとは・・技術者のこだわりと音色の奥深さを再確認しました。最近国産のピアノでこのような雑音が非常に気になっていたときなのでタイムリーなことでした。ピアノを造る人、整備調整する人、そして弾く人。それらは繋がって「音」になっていると感じています。 (N.N)
 
自宅のピアノとの音の違いが明確にわかりました。企画には初めての参加ですが、実物での説明、メーカーの歴史と近況のお話等、おもしろかったです。 (H.E)
 
「グロトリアン・スタインヴィッヒ」という名に特別の何かを感ずるのは関東の私だけでしょうか。「世界一のアップライト」と大正時代から東京でも評価されていたピアノ。一度触れて見たいと、東京の楽器フェアーで聞いた音は想像とは隔たりのある音とタッチに実は戸惑いました。今回うたまくら社に代表的な3機種のアップライトが集まり特に130cmのフルサイズは2mのグランドピアノにも匹敵する音でまさに圧巻でした。その創意工夫が「売り物」のように思われがちですが、見えないけれど知れば一目瞭然の部分バックポスト:支柱や響鳴板のRと側板付きのヴァイオリンのような構造だけではなく、アクションの裏側にこそ、その音の秘密が有った事は(ハンマーシャンクの木の棒の叩く音程までもそろえている)長くヨーロッパに居た荒木さんが、直に研修を受けた会社だからこその説得力を持って、皆が聴き入りました。その気の遠くなる作業を惜しみなくしてこそ、唯一無二「世界一のアップライト」であり、そこに在る「職人魂:ピアノを、音楽を愛するからそこまでやる」を感じました。現在のこの構造がないグロトリアンと会社の盛衰を鑑みると、一抹の寂しさを感じてしまいます。 (T.I)