セミナーレポート

ザウターの秘密

ザウターに関わらず、輸入ピアノは船にのって過酷な状態を越えてやってきます。このザウターが来たときも鳴りが悪く、鍵盤も上がってこないという状態だったというところから話は始まり新品といえど、調整はすごく変化してしまいます。ピアノはその好ましくない状態からいかにいい状態にするかが技術者の腕にかかってきます。

■響板と響棒

ピアノの弦の振動を響かせる心臓部、響板。そして響板のクラウン(反り)を保持する響棒に工夫があります。一般的には響板は中心程厚みがあり7~10ミリでできていますがザウターは8ミリの均一の厚さ、そして振動の持続性を持たせるために、真ん中に質量を持たせるため響棒に工夫が施されているとのこと。ピアノは弦、アクション、ハンマーなど各種、同じ部品メーカーのものを採用しています。そうなると、設計やボディーの素材で音色に違いを出しています。そこでの響板、響棒での工夫は大きく影響してくるのです。

 

■ウィンナートーン

ザウターもベーゼンドルファーと同じように、ウィンナートーン(ウィーン風の音色)と呼ばれています。一体何がウィンナートーンなのか。そのなぞは今回で解けました。ザウターは南ドイツで作られていますがウィーンの流れを持つメーカーです。そしてずっとザウター家が守り、創立200年近くの歴史を誇っています。はたして200年前は今と同じピアノを作っていたのか?そうではありません。
 
200年程前はフォルテピアノに近いものだったそうです。そして当時の音楽、芸術の中心のウィーンに技術者が大勢集まって楽器作りをしていたそうです。そこで生まれた音色を受け継ぎ、当時の作り方、考え方を引き継いでいるのです。そして軽い木材スプルースをボディーにも使い、箱鳴りをさせているということがウィンナートーンを再現している一つの秘密です。

■整音の体験

アクション、ハンマーを調整して、よりザウターをウィンナートーンの音色に仕上げなければなりません。ここでお客様にも整音の中の作業、針刺しを体験していただきました。

■手のひらでの体験

pp~ffのときのハンマーが弦にあたる感触を手のひらで体感していただきました。ffのときは手のひらが痛い・・・という声も。これほど強く弦をたたいているとは思わなかったです。「音作りをする技術者は、たくさんのいい音を聴き、自分がいいと思う音色を目指して音作りをするんです。」ということは、良いと思う音が自分の基準になりますから、本当に良い音を聴かなければならないことがわかりました。
お越しいただいた方から感想をいただきました。

ザウターの響板やハンマーのフェルトという音に直接関係する部分について詳しい解説が聞けたこと、さらに、実際に自分で見本のフェルトに針を入れるという作業を体験できて、整音という素人からみれば謎めいた作業の一端を知ることができました。ピアノという楽器の繊細な一面を紹介していただき、とても楽しかった企画でした。 ( 兵庫県 J・I )