セミナーレポート

スタインウェイ・アップライトの秘密

ピアノメーカーでは珍しくグランドピアノよりアップライトの生産台数が少ないのです。
なぜでしょうか。グランドピアノをそのまま立てて使っていると錯覚を起こしてしまうほどの上質感はどこから来るのでしょうか。その秘密に迫ります。

■歴史の中から見えてくるピアノ

2つの国にまたがり製造され続けているメーカーであり、1970年頃まで家族経営されていたスタインウェイ。そのメーカーがなぜ売却され今に至るのか、創立時代から現在に至るまでの壮絶な歴史がありました。

 

■巨匠の演奏

うたまくらにあるスタインウェイの時代に近い巨匠の演奏の映像を見ていただきました。そこから今のピアノを弾いている人たちと違ういろんなオリジナリティーが湧いてきていました。
 

■歴史の中の汚点

経営のためには生き残っていくためには今までのものを捨ててしまわなければいけない事もあります。しかし、その合理化ゆえに犠牲になった事も多くありました。その一つがニューヨーク製で使われていたテフロンの部品です。世界一流といわれるメーカーが迷っていた時代もありました。

■Vertegrand?グランドのようなアップライト?

ヴァーティグランド、ヴェルティグランド何と読むでしょうか。とにかく意味はVerte縦型Grandグランドです。1900年初頭にこのようなうたい文句で宣伝され販売されていました。鉄骨にも、当時のチラシにも書かれていていかにも他との差別化を意識しています。
 

■鍵盤の手前が下がる?

その一つの特徴としてアクションをはずすと普通は鍵盤はそのままの状態ですが、スタインウェイは手前がすべて下がります。つまりグランドピアノと同じ鉛が手前に入っています。これはドイツの専門書の中にも唯一他のメーカーと違う箇所として紹介されています。

 
 

■裏に自信あり

ピアノの後ろを見た事がありますか?アップライトピアノでは特に壁側に面しているので見る機会がありません。それをあえて見せる事ができ自身のあるピアノは少ないと思います。グランドピアノのノウハウが生かされている支柱にグランドと同じ材料で作られているピアノ。細部にわたり音を追求した時代の貴重なピアノです。

お越しいただいた方から感想をいただきました。

歴史的な背景からアップライトの事が学べ、またスタインウェイのこだわりも知る事ができ、面白かったです。ピアノを弾く人にも是非お勧めな企画だと思いました。いろいろ話を聞いていると、イーストマン(アメリカの大学)で勉強してた頃がふつふつと蘇ってきて面白かったです。日本でそういう突っ込んだ話ってあんまりないような気がするのですが、もっとこのような企画に音楽を勉強している人も関心を持つようになるといいなあと思いました。いろんなアイデアも湧いてきたので、良かったです。(T.S)
 
楽しかったです。他者のメーカーのアップライトに無くスタインウェイのアップライトだけ鍵盤の錘の位置が違うのが面白かったです。また、歴史的にテフロンの素材を使っていた事にびっくりしました。アメリカらしさも知る事ができました。(H.I)
 
スタインウェイに限らず何度かこちらで詳しく話を伺いましたが、知れば知るほど面白いと思います。スタインウェイは経営的にも営業が上手かったから生き残っていますが、いいピアノを作っても経営もうまくないと生き残る事ができず、もったいない事になります。ピアノの支柱や鍵盤の錘、そして実際に音を聴く事で納得し、そしてまた新たな疑問も湧いてくるので、連続企画で荒木さんのお話を伺うことはいつも楽しいです。(A.O)
 
ピアノの後ろを見るなんて思っても見ませんでした。また、スタインウェイの話も面白かったですが、私にはホロヴィッツとパデルフスキーの演奏を見られたのが良かったです!最近見るピアニストの演奏とぜんぜん違っていました。そういう人たちが“もの”を育て“もの”もまた人を育てるんだなと思いました。(N.N)