セミナーレポート
タローネの秘密
今は亡きピアニスト、ミケランジェリの愛したピアノでもあり、日本のコンサートピアノを作ったとも言われる技術者の魂がこのピアノにはあります。幻のピアノ、今ではもう生産されていない名器です。
■ピアノは芸術の中ではほんの一部
タローネの生まれた家庭環境は芸術の中に埋もれているほど恵まれていました。画家の父、詩人の母のもと9人兄弟で兄弟ものちに建築家やデザイナーと感性を発揮する職業についています。本人も若いときには舞台の役者をしてシェークスピアを演じていました。
このような土台からピアノつくりが始まるのですが、目指す音作りもお手本となるピアノは無く、歴史あるイタリアの文化でもあるヴァイオリンのような音を目指していたということです。
ピアノの世界からピアノを作ったのではなく、芸術の一部として作られていったということが何よりも、演奏者側にたった視点で、弾き手にいろんな芸術表現が出来る作品になっています。それが弾き心地となっています。
■宇宙の響き
1960年代にタローネがヤマハを訪れ、フルコンサートグランドを造るのに協力しているときのことです。ピアノ造りの表現として宇宙の響き、音の拡散、集まりなどとかなり抽象的なやり取りがあって、技術者は頭を抱えたということです。
実際にタローネと同じ芸術性の視点でないと理解は難しいかもしれません。でも、演奏者とのやり取りもこれと似たところが多分にあります。同じ土俵に立つには芸術センスが欠かせません。
■引き継ぐものとあえてそうしないもの
1982年タローネが亡くなると工場も閉鎖へ向かいました。そして職人はFAZIOLI(イタリアのピアノメーカー)に行く人もありタローネとは関係ないと言っています。ここまでこだわったものをどう継承するかは本人がいない今は大変難しいと思います。
■タローネが残したもの
本人が亡くなってもTALLONEは残っています。世界のほとんどのメーカーが中国で生産してコストダウンして生き残りをかけている中、もしTALLONEが残っていたなら同じ方法をとっていたかもしれません。そうならばあえて生き残らなくても良かったかもしれないと思うのです。
創始者の想いが詰まったピアノを伝えていきたいと思います。
ピアノ自身の大きな主張を感じられませんでしたが、逆にそれが普通では無いリラックスして弾く事ができるということがこのピアノの特徴なのではないでしょうか。そして、自分の色を作れるように扱いこなすには、まだまだだなと思いました。タローネがピアノ製作にイメージしていた「宇宙」とはいったい何なのか・・不思議です。 (N.N)
手作り色の強いピアノというと拙いイメージがあったのですが・・。芸術作品からその人の生涯を語れる、語り残すという事はとても意義があると思いました。タローネはとても素直な音に感じ、ピアノに対してのイメージが変わる新たな発見ができたと思います。 (K.M)
タローネを見て、現在造られたピアノがこういう良い状態で後世に残していけるものなのだろうかと疑問に思いました。現代のピアノ造りの近況、品質の差、ギャップの差が悲しくもあり、良いものは伝えていけなければいけないのだと、改めて感じました。今回の企画はそれがわかって大きな収穫でした。 (E.O)
広がりのある、まとまった音色には空間のイメージがあります。また、癖がなくス
トレスのないリラックスした音で、細かい事を気にせずにありのまま弾く事ができるなと思いました。こういう楽器から、「イメージ」を感じ取る事ができるのではないかと思います。タローネがどんな人なのか、資料からのお話も聞いてますます気になりました。 (N.S)