歌枕直美 友の会
「うたまくら草子」の題字を書いて頂いた、脇田先生の登場です。奈良明日香村が一望できる先生のお宅にお邪魔し、古代ロマン溢れる対談となりました。
■本当は書家?
歌枕直美:「うたまくら草子」の題字をありがとうございました。お客さまからも大変好評で、うちのスタッフの中には、先生が書家だと信じきっていた人もいたんですよ。
脇田宗孝氏(以下敬称略):僕は型から入らないのでね。専門ではないが、その時その時の気分で自分が楽しんで表現します。そうして自分の感性をぶつけて一生懸命書いているのですよ。昔、知人の家の表札を頼まれて書いたのです。それ以後、その家の中の事が良い方向に変わったと喜ばれましてね(笑)。
歌枕:では、きっとこの活動も発展して良いことがおこりますね(笑)。
■古代と現代の橋をかける!
歌枕:先生は子供の頃、埴輪の破片で遊んでいらっしゃったと以前お伺いしましたが、陶芸家になられたのは、そういうことが影響してるのでしょうか?
脇田:人は運命的に与えられた環境と、その人が持っている感性が合えばその職業なり運命を決めていくと思います。子供の頃、桜井市に住んでいまして、学校から帰ると近くの山に行き、埴輪の破片をポケットにいっぱい拾い集め、池でそれを投げて何度はねるか、友だちと競って遊ぶんですよ。僕は、そうやって古代の造形に触れていたので、土に関わる仕事がしたいと思って陶芸の世界に入ったんです。
歌枕:考古学と陶芸の世界がつながっているのですね。
脇田:僕のは、「実験考古学」と呼ばれる分野なんです。きっかけはね、子供の頃自分の城だって思って遊んでいたところが、実はメスリ山古墳という大王の墓で大変なものだとわかり、そこから円筒埴輪が見つかったんですね。だけどそれがどうして造られたのかがわからない。これを再現して古代と現代の橋をかける、それが僕の天職だ、他の人にとられてたまるかと思いましたね(笑)。
歌枕:人生の転機には何かそうやって、チャンスと出会うのですね。私も運命的に歌枕の姓になり、万葉集と出会いそして、今自分の創作の世界を天職と思っています。
■明日香に風が吹く
歌枕:「日本文化財科学学会」の際は、演奏させて頂きましてありがとうございました。
脇田:はじめて歌枕さんの歌を聴いた時に、なにかビリビリと感じたんですよ。感性の波長があうというのか、琴線にふれ、陶酔してしまう世界があったんです。ですから、学会でコンサートをして頂き、全国の学者たちにもこういう世界があることを知ってもらいたいと。そうすればもっと良い研究ができるかと思いましてね(笑)。状況の悪い中、無理いってお願いしました。
歌枕:とんでもございません。当日のコンサートでは「法隆寺の飛天か、薬師寺の吉祥天女がここに舞い降りたような…」なんてご紹介頂き、びっくりするやら、恥ずかしいやら。でも一生涯このような表現をしていただける事は二度とないだろうと、素直に受け止めることにしました!
脇田:おかげさまでコンサートの後は和やかな懇親を深めることができましたよ。
歌枕:舞台設営からピアノ運びまで、先生が先頭に立って準備して下さって心から感謝いたしております。
また今日は貴重なお時間をありがとうございました。春の明日香の風は、格別に心地良かったです。
脇田 宗孝 (わきた むねたか) | 昭和17年生まれ。 タイルデザイナーを経て明日香村にて〈赫窯〉を開窯、以後陶芸制作・古代窯業の研究に専念。 個展・団体展などで作品発表。実験考古学として、古代日本の土器・埴輪、奈良三彩・緑彩の研究と復元制作を試みる。 文部省長期在外研究員としてドイツで陶芸研究と指導をする。 著書 「世界やきもの紀行」 論文 古文化財(陶)に関する論文多数 現在 奈良教育大学教授 |
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