歌枕直美 友の会
ヨーロッパ公演においてもご協力いただいたトツカ・ピアノ・メソッド(TPM) *注の考案者である、戸塚亮一氏にご登場頂きます。
■幸運の女神”ベヒシュタイン “
歌枕直美:ドイツの110年前のピアノ、ベヒシュタインが縁で戸塚さんとお知り合いになれて、かれこれ6年になります。
戸塚亮一氏(以下敬称略):そんなになりますか。
歌枕:はい。初対面はピアノを見るために横浜へお伺いしたときでした。戸塚さんの著者『ベヒシュタイン物語』を拝見していましたので、ドイツに住んでおられるはずの「著者に会えた!」という第一印象でした(笑)。
戸塚:私は何て美しい方が来られたのだろうと思いましたね。
歌枕:本当ですか?(笑)。
戸塚:それで、つい私が考えていたトツカ・ピアノ・メソッド(TPM)について熱く語ってしまいましたよ(笑)。
歌枕:「ピアノで遊ぶ」が基本コンセプトのTPMのお話を伺って深く共感いたしました。
戸塚:コンセプトは私の 数年間ドイツに住んでいる経験から創案することができましたが、私の役割はそこまでです。音楽教育の専門家でもなくピアニストでもないわけですから、具現化していく過程がわからないんですよ。それを歌枕さんが理解し、取り上げて下さってやっと形になった。感謝してます。
歌枕:とんでもございません。ただ、日本の音楽教育に背を向けていた私が、まさかこのような事業にかかわることになるなんて、運命とはわからないものだとつくづく思います。
■「遊び」とは?
戸塚:「人間の人間たる所以は遊び」という学説があります。ヨーロッパでは音楽は遊びの要素なんです。日本人の思う遊びとは少しニュアンスが違うかもしれませんが。
歌枕:確かにそう思います。
戸塚:遊びたい心に年齢は関係ありませんからね。「楽譜がよめなくてもピアノが弾ける」なんていいじゃないですか。
歌枕:それが「数字奏法譜」の開発へとつながったのですね。
戸塚:そうです。楽譜にとらわれず、自由さを失わないという事を大切にして、好きな曲が弾ける。ピアノで遊ぶなかでどう工夫をするのか、それを楽しみながら自分の音楽を作り上げてゆく。老化防止にもきくと思いませんか(笑)。
歌枕:このメソッドの生徒さんは殆ど皆様、そのようにおっしゃって、楽しみながらピアノを弾いて下さっています。
■本質を見極める力
戸塚:基本的なものの考えで、人生の感じ方は変わります。遊び心と頭脳をもってまず本質を見極めること。それさえあれば理念の実現があって結果は必ずついてくる。
歌枕:本質を見極める力が身についていると、自分の人生を豊かに生きてゆく事ができますね。
戸塚:歌枕さんは「それが出来た」からこそ誰も実践しようとしなかったTPMを、現在のように全国に展開して下さったのですよ(笑)。
歌枕:幸か不幸か…(笑)。
戸塚:歌手としての活動も大変でしょうけれども、TPMもよろしくたのみますよ。
歌枕:はい。TPMの開発をとおして培った「とらわれない心」から、『あさね髪』などの曲作りができるようになったのですから。私自身関わらせてもらって本当によかったと思います。自分にできないと思っていた事が、考え方を少し変えるだけで可能になるのですね。いかに思考回路が大事かということを日々痛感します。
戸塚:あと大切だと思うことは芸術も経営も手塩にかけて育てるということ。
歌枕:そうですね。それに「育てる」ということは自分自身が「育てられる」ことになるわけですから、一石二鳥ですね。
戸塚:歌枕さんはひとり何役もしょって立っておられるわけだけど「自分の芸術性を信じていくこと」をこれからも忘れず、ご活躍下さい。
歌枕:ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
*注:楽譜が読めなくても30分で両手でピアノが弾ける数字奏法譜を使ったレッスン法 〔日本著作権協会(出)許諾第9708547‐701号〕
戸塚 亮一 (とつか りょういち) | 1939年東京生まれ。 1980年タイヨー・ムジーク・インストゥルメンテGmbHをドイツに設立。 ドイツでは「テクニクス電子楽器」(松下電器製)、日本製、ポーランド製、韓国製、中国製のピアノ、「ASA」音響機器等の販売総代理店。 また日本では「ベヒシュタイン」「ザウター」ドイツ製、「プレイエル」フランス製等の高級ピアノや「ノイペルト」「ザスマン」チェンバロの日本総代理店として、大型鍵盤楽器の輸出入販売業を営むためユーロピアノ株式会社(東京)を設立。 そのかたわらドイツでの20余年の滞独経験を生かして、安田女子短期大学、産能短期大学で非常勤講師を歴任。 主著『ベヒシュタイン物語』(南斗書房)/ユーロピアノ株式会社代表取締役/日本ピアノ史家協会(会長木村尚三郎)事務局長/独日音楽振興会(本部ドイツ)設立発起人/トツカ・ピアノ・メソッド振興会(有)主宰 |
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