歌枕直美 友の会
初の女性ゲスト。歌枕が対談を熱望していました、アウトドア・ライターの天野礼子さんにご登場いただきます。女性パワー全開!熱気あふれる対談となりました。
■アマゴと一緒に泳いでいた
歌枕直美:お生まれは京都でいらっしゃるんですね。
天野礼子さん(以下敬称略):京都市の一番北の小学校に通ってました。自然に囲まれたところで、小さい時からアマゴと一緒に泳いでいました(笑)。
歌枕:釣りを始められたのはいくつの時なんですか?
天野: 歳ですね。アマゴ釣りから始まって、海のチヌとか、アユ釣りとかいろんな釣りをするようになり、大学を卒業してからも就職もしないで日本中の川とか海とか湖を釣り歩いてました。
歌枕:長良川の運動(長良川河口堰建設に反対する会)を始められたのはいつですか?
天野: 歳の時。約 年間水辺を歩き回り、日本という国は本来自然に恵まれた川を中心とした国であるのにそうでなくなってきたことがわかったんです。それで「最後の川」というべき長良川の河口に大きなダムができると知ったとき、日本にもうこんな川が一本しかないのはおかしいと思ったんです。
歌枕:運動に携わる動機はなんだったんですか?
天野:逃げなかった。 年間か歩いて長良川が日本の「最後の川」と知った。他の人はそのことを知っても動かない。でも私はそこから逃げなかったということですね。
歌枕:なるほど。
■日本初!女流アウトドア・ライター
歌枕:関西に生まれたということは、天野さんの生き方に、何か影響をおよぼしましたか?
天野:やっぱりあるんじゃないですか。京都という町で、臈纈染め作家である芸術家の父に「自分が信じたことをやる人間になりなさい」と言われながら育った。そういうことが今の自分の背骨になっていると思います。
歌枕:「背骨」いい言葉ですね。ところで、アウトドア・ライターという肩書きは天野さんの師匠である開高健さん(作家)に勧められたとお聞きしましたが。
天野:はい。私が最初のエッセイを書いた十数年前、日本ではまだ誰も使っていないこの肩書きを使うよういわれました。私自身、この仕事は重要な仕事であり、自分にふさわしい仕事であるということがようやく最近わかってきました。
歌枕:それはどういう意味ですか。
天野:例えば、私が「長良川を守ろう」ということを誰かに言うとします。そうすると「運動家の天野さんが何か言ってるわ」で終わるよりも、私が書いた本を読んだ人がその川の魅力を知り、自然にそこが好きになる時の力の方がものすごく強くて持続的なんですね。声高に訴えるよりも、自分の職業で長良川のすばらしさを伝えられたら、そのことの方が多くの人を持続的に感動させられる。だからこの仕事って素晴らしいんだなと思うんです。開高さんはそこまでわかっていてこの肩書きを私に勧めたんですね。
歌枕:深いお言葉です。いろんな師匠のあり方があるんですね。
天野:大事なことは、自分に自信を持って自分のやりたい事をやるということ。壁にぶつかっても逃げださずに追求することと思っています。
歌枕:ご自分の足で歩き、心で感じた言葉ってやはり説得力があります。
■第六感は女性が強い
天野:私は歌枕さんを見てて「自分と同じだなあ」と思うことがあるんです。「この世界に私は必要だ」と思っているでしょ(笑)。
歌枕:はい(笑)。
天野:今、自然も心もすさんでいるこの世界に必要な歌姫がここにいる。歌も、考えていることも、今の時代にすごく重要な人である。人間が、自然だけでなく人間の心をも傷めつけてる時代に、歌で癒してくれる人がいるんだというのが初めて会った時の印象ですね。
歌枕:私は天野さんにお目にかかった時、第六感で「この方はとんでもなく凄い人だ!」とピンと感じました(笑)。
天野:現代人は、もともと人間が持っている能力、第六感というものを失いつつあります。おそらく万葉の時代の人々は、そういう能力を豊かに兼ね備えていたんですね。そういうところに帰るという意味でも、今、人間というのは癒しをすごく必要としていると思います。
歌枕:私も同感です。
天野:今年の5月『よみがえれ神崎川!フェスタ』(大阪府に流れる神崎川の環境改善運動を知ってもらい広めるための催し。神崎川河川敷で実施)でライブを行っていただいた時、川の本来持っている力を引き出すため、歌枕さんに川に向かって「よみがえりなさい」というメッセージを込めて歌ってもらうことが必要と思ったんです。
歌枕:とても有意義な経験をさせてい
ただきました。
天野:歌のメロディーの力だけでなく、歌詞の持っている力と、歌っている人が引き出してくる大きな力がある。歌枕さんがこれからどういうメッセージを世の中におくっていくのかいつも気にしてます。
歌枕:ありがとうございます。今日は天野さんにたくさんのパワーを頂きました(笑)。これからもよろしくお願いします。
天野 礼子 (あまの れいこ) | 1953年京都市生まれ。同志社大学文学部美学専攻。 アウトドア・ライター。「21世紀環境委員会」呼びかけ人。 19歳で釣りを始め、全国・世界の川・湖・海辺を巡り歩く。 1988年より、師・開高健らと共に「長良川河口堰建設に反対する会」を結成。 主な著書に『あまご便り』(山と渓谷社)、『萬サと長良川』(筑摩書房)、『生きている長良川』(講談社)、『川からの贈り物』(東京書籍)、『21世紀の河川思想』(共同通信)、『川は生きているか』(岩波書店)、『川よ』(NHK出版)など。 |
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