歌枕直美 友の会
コンサートや式典などで、山野草花を基調に舞台や空間演出をされている臼井順子さんにお話しをお伺いしました。
■野の花たちの生命力
歌枕直美(以下歌枕):先日の吹田歴史文化まちづくりセンターでの記念式典では、久しぶりにご一緒させて頂いて大変嬉しかったです。実に空間にマッチした宇宙観を感じる草木のあしらいが、素敵な創作花でした。
臼井順子(以下臼井):それはありがとうございます。花をいくら美しく生けても、置く場所・雰囲気・スペース・色彩などがマッチしてこそが総合美ですよね。
歌枕:どんなことにおいても共通しますね。また、山野草花にこだわっておられますが、何か理由がおありでしょうか。
臼井:自然から採ってきたものには、生命力があります。草花って小さくて可憐そうだけれど、自己主張があってあきない、人間も一緒だと思います。雨風に打たれてきた人は味があると思いません?
歌枕:確かにそうですね。人間味のある方は、一筋縄ではいかないご経験をされていますね。ひょっとして、先生もそのお一人でしょうか?
臼井:そうは見えないでしょ。(笑)
歌枕:いえいえ、どんなご経験をされましたですか?(笑)流派を越えて独自の世界を切り開いていらっしゃるのですが、岐路がおありでしたでしょうか。
臼井:ある日、「お花って、何もしなくても綺麗ですね。」と、いわれたことがあるんです。その言葉にハッとしましたね。それから、自分のなすべき事を再認識することができたんです。
■可能性への挑戦
歌枕:環境プロデューサーとして、各地で御活躍されていますが、こうなると想像されていましたでしょうか。
臼井:全く思っていません。(笑)ただ、お花に関することはいろいろ挑戦したいと思ってたんです。可能性のあることはまず全てやっていく、その内にセレクトされていくと思ったんですね。
歌枕:そうしたら枠組みなく、どんどん舞台、古民家、駅、公園など果てしなく可能性が拡がっていかれたのですね。
臼井:考えてたら何もできない。失敗してもなにか得るものはあると思っています。そう。可能性というものに、挑戦するのみよ!
歌枕:私もそう思います。こけてもただでは起きない。転んだら両手で何かを掴んで立ち上がります。(笑)
臼井:何だか私たち似てるわよね。
歌枕:おこがましいですが、私も同感です。(笑)
臼井:生きるエネルギーも、仕事にかける情熱も同じぐらいね。なかなかいないわよ。
■陰翳礼讃
歌枕:お花を活けられるとき、デザイン画とかきっちり書かれるのですか。
臼井:だいだいは決めますが、あとは活けながらですね。まず、大枠を活けて、あとは細かいところを仕上げていきます。3だけ表に出して7は陰に、その方がより魅力的になります。
歌枕:大変心に響く言葉です。日本人が持つ素晴らしい感性である陰翳ですね。
臼井:見せよう、見せようとすると、見る人を疲れさせます。退いた部分がある方が魅力的ですし、シリアスな部分が大切ですね。
歌枕:とても参考になります。それ、いただきます。(笑)
臼井:歌枕さんの演奏を何度か聴かせて頂いて、歌枕さんの万葉の世界は、人の心を打つものがある、魂を揺さぶるものがあると感じます。
歌枕:ありがとうございます。野の花のような存在で、歌い続けていければいいなと思っています。
臼井:私も、一本の線で人の心をゆさぶるような作品づくりをしたいと思ってますよ。
歌枕:やはり究極はシンプルなんでしょうか。また是非、御一緒させていただきたいです。本日は、ありがとうございました。
臼井 順子 (うすい じゅんこ) | 自然環境プロデューサー、華道「恵千会」主宰。 1947年宮崎県生まれ。様々な流派を学んだ後、各教室で教鞭をとるうち、現在の生活にマッチした生け花の必要性に気付き、1987年華道「恵千会」主宰となる。現在は「自然と共に生きる」人の心を癒してくれる自然を生活の中に取り入れて自分流に楽しむ事を提案している。 雑誌、個展、新聞、イベント、講演などの分野でも活躍している。 |
---|