歌枕直美 友の会

うたまくら草子
歌枕直美の心から語りたい
vol.58 青柳良明

生まれも育ちも京都。歴史や文化を愛し、京都のためにできることは何かと考え、活動を続けられている青柳良明氏に、お話をお伺いしました。

■伝統と創成
 
歌枕直美(以下、歌枕):先日は、京都・大覚寺での公演にお越しいただきましてありがとうございました。
 
青柳良明(以下、青柳):大覚寺では大変堪能させていただきました。音楽もロケーションも、本当に素晴らしかったです。ありがとうございました。
 
歌枕:京都府庁を退職され、現在、専門学校の校長先生をなさっているとお伺いしました。大きな決断だったのではないでしょうか。
 
青柳:はい。第26回国民文化祭が成功を収め区切りがよかったのと、役所の中で後輩も育って来たので、自分が京都のためにできることは、役所だけでなく他でもあるだろうと思いました。
 
歌枕:京都府では、どのようなお仕事をなされましたか?
 
青柳:教育や文化、地域振興など、さまざまな仕事をさせていただきました。
 
歌枕:ご記憶に残っているお仕事はどんなことでしょうか。
 
青柳:教育委員会在職中に、学校週5日制がはじまったことでした。
 
歌枕:ゆとり教育は大変問題になりましたね。
 
青柳:京都府としても、土曜日の子供たちの受け皿をどうするか、国や市町村、学校関係者、地域の方々などと話し合い、知恵を出し、いろいろな工夫をしました。
 
歌枕:その結果はいかがでしたか?
 
青柳:学校の勉強だけでなく子供たちが、生涯にわたって学ぶ機会は、社会の中に沢山あることがわかり、特に、土曜日や休みの日に子供や親子で体験できる情報をまとめて配布しました。生涯学習という言葉が使われた頃です。そのきっかけが学校5日制だということを、多くの方に知っていただきました。
 
歌枕:すばらしいですね。その後、どのような部署に行かれましたか?
 
青柳:その後、教員の人事に携わったり、東京にある全寮制で全国から地方公務員が集まって、高度な地方行政を学ぶ自治大学校に半年間行く機会を頂きました。
 
歌枕:青柳さんはじめ全国から有能な方が集まられているんですね。
 
青柳:いえいえ私は勉強は嫌いでしたから。(笑)ただ上司から、「勉強せんでもいいから、全国に友達を作ってこい」と言われました。勉強は大変でしたが、各都道府県から集まった仲間と酒を酌み交わし、旅行したり、全国に友人ができ、頼りになるネットワークができました。
 
歌枕:それが今の青柳さんの糧になられているということですね。
 
青柳:はい、その通りです。人のつながりは財産ですね。またその後「平安建都1200年記念事業」の仕事にて2年間携わり、多くの人と出会えました。京都というのは、本当にすごいところだと実感した2年間でした。
 
歌枕:京都のどういうところでしょうか。
 
青柳:京都には、日本を代表することがたくさんあります。隣にいる人が人間国宝だったり、人が普通に暮らしている町中に国宝や世界遺産の社寺があります。また京都は伝統と創成の街です。1200年間、伝統を守りながら新しいものを見いだしてきました。それが今も続いているというのが京都です。
 
歌枕:そうですね。伝統を守ることも大切ですが、そこから学び新しいものとして育てていくことはとても重要なことだと思います。
 
 
■動機善なりや、私心なかりしか
 
青柳:平安建都1200年の仕事を終えたあと、京都府南部の地域振興の担当となり、その地域に行きましたが、最初は全く相手にしてもらえませんでした。それでも半年間通い詰め、あるとき地域の人から、私の担当分野と違うことを調べて欲しいとを何度も繰り返し依頼されました。これは、私が本気なのかどうか、地域のことを真剣に考えているのかどうか試されているのかなと思いました。その時、この稲盛さんの言葉「動機善なりや、私心なかりしか」を思い出しました。
 
歌枕:稲盛和夫さんのお言葉ですか。素晴らしいですね。
 
青柳:はい。「自分の動機が善であり私心がなければ、かならず成功する。」という意味で、自分の立場や、京都府の立場でなく、地域の人の目線に立ち、地域を見て、その地域のためにやるのだという思いでないといけないと気づきました。
 
歌枕:稲盛さんの影響を受けられたきっかけは何ですか?
 
青柳:稲盛さんが長岡天満宮の奉賛会の代表を務められていまして、そこで稲盛さんの哲学に、直に触れることができて、感じるものが沢山ありました。
 
歌枕:自分で作ってこられた人ですから、本当に素晴らしいと思います。
 
青柳:その後、稲盛さんの生のお話を聞き学びたいと「盛和塾」への入会を希望しましたが、社員一人でも雇っている経営者でないと入れないと断られました。それでも、なんとかできないかと考え「公務員の盛和塾」を勝手に作り、いろいろ粘ってお願いし塾長例会に参加させていただくことや、いろいろな機会に稲盛さんのお話を伺うことができました。
 
歌枕:その熱意が認められたのですね。何かを経営しているだけでなく、青柳さんのようにいろんな重要なつなぎをしてくださる人が、世の中にとって大切だと思います。そこではどんなことを学ばれましたか?
 
青柳:例えば、仕事の流れとして押さえておく「情報」「連携」「企画」という言葉ですね。新たらしいことを生み出すのは0からだけでなく、世の中にはいろんな情報がある、それをつないでいくといろんなことができるという考えです。この3つのキーワードは、私の宝物です。自分のが行っていることがこの3つのキーワードのどれであるかを間違えていなければ、ほとんどの仕事はこの流れでできると思います。
 
 
■京都学科
 
歌枕:今の専門学校でのお仕事は、青柳さんが求められていたお仕事ですか?
 
青柳:そうですね。いろんな仕事をさせて頂き、多くの人に出会って、また、若い頃から少林寺拳法の修行をしていたものですから、人作りはすべてのスタートラインだと思っていました。今の学校の理事長と、東京に勤務していた時に出会い、京都での学校の構想をお伺いしました。
 
歌枕:大変エネルギーのいるお仕事ですね。
 
青柳:そうですね。学校を作るというのは。力がいるダイナミックな仕事ですね。
 
歌枕:学校は、二条城の隣にあるとお伺いしていますが、未来学園は、どのような専門学校でしょうか。
 
青柳:現在は歯科衛生士を養成しています。今後は新しく「京都学科」という学科をスタートさせ、京都を体感し、京都に精通して、グローバルに活躍できる人材を育成したいと考えています。
 
歌枕:京都学科とは、どのような内容ですか。
 
青柳:京都には、世界に通じる「京都ブランド」があります。千年を生き抜いた力、信頼、品物など、ほんまもんがあり、それに触れて体験して学び、ほんまもんの教養を身につけた世界に通用する人を育てたいと思っています。
 
歌枕:青柳さんの今までの経験すべてが集約されているお仕事になりますね。
 
青柳:そうですね。少林寺拳法の仲間、国体、全国生涯学習フェスティバル、国民文化祭、平安建都1200年事業で出会った人々や京都の地域で根っこを張って生活している人たちなどがすべてつながります。日本の文化や価値に、自分のよりどころを求めている人たちにお越しいただきたいと思っています。
 
歌枕:とても興味がある内容です。
 
青柳:歌枕さんはすでに極められ、新しい日本の文化を生み出されています。そして歌枕さんの公演は、出会いと気づき、そして文化を通しての心をつなぐ活動だと思います。これらもますます充実され、国内外でのご活躍を期待しています。
 
歌枕:ありがとうございます。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
 
 
 

青柳 良明(あおやぎ よしあき)

京都市生まれ。京都市出身。京都市在住。

昭和49年4月京都府入職。京都府教委社会体育、教職員人事、国体競技力向上対策本部、京都府職員研修所、全国生涯学習フェス実行委員会、平安建都1200年記念協会、学研都市推進室、京都府東京事務所副所長、企業立地推進室参事、京都府観光・コンベンション室長、京都府国民文化祭推進局副局長等を歴任。

平成24年3月56才で退職。少林寺拳法五段。

現在、学校法人未来学園理事・学園本部副学園長、京都文化医療専門学校校長として勤務。