歌枕直美 友の会
来年「やまとうた」二十五年目を迎えるにあたり、歌枕直美友の会 上島朱實名誉会長、竜門陽子新会長にご登場頂きお話を伺いました。
記紀・万葉集「やまとうた」二十五周年
歌枕直美(以下、歌枕):1997年3月24日に音楽で綴る万葉集「みやびうた」CDをリリースして24年が経ち、来年25年目を迎えます。今回は、その時より、ずっと活動を応援し続けてくださった友の会名誉会長の上島朱實さんと、2021年1月より友の会会長にご就任くださった竜門陽子さんのお二人にお越し頂きました。
上島朱實(以下、上島):24年前、私は、歌枕さんの活動を新聞で知りました。日本人としての歌表現を模索される中で万葉集に注目され、これに曲をつけた音楽で綴る万葉集「みやびうた」を発表されるコンサートに大変興味を持ち、早速会場へ向かいました。
歌枕:ありがとうございます。上島さんが一番前の席でお聴きくださっていたことを覚えています。
上島:「みやびうた」を聴いた瞬間、その豊かな感情に魅了されてしまいました。それ以来、万葉故地や歴史的建築でのコンサートなど、各地のコンサートに行く様になりました。その間に、たくさんの名曲が誕生しましたね。
竜門陽子(以下、竜門):私がはじめて歌枕さんのCDを手にしたのは、約20年前で、大学を卒業して大阪に戻って来た頃、CDショップで「みやびうた」を見つけました。大学生活を横須賀で過ごしたため、大阪を離れると、身近にあった貴重な物に気付き、万葉集にも興味を持ちはじめた時期でしたので、万葉集を音楽にして歌っている方がいらっしゃると知り驚きました。それから万葉の歌を身近に感じながら、楽しんでいました。
歌枕:今から5年くらい前に、大阪府学校歯科医師会の会報にコラムに、やまとうたを紹介して下さるとのご連絡をいただいた時、何か縁を感じました。
竜門:本当に人の縁は不思議ですね。私が所属している大阪府学校歯科医師会の会報にコラムを載せていただくことになり、選んだ題材が「万葉集」についてでした。ちょうど春に発行される会報でしたので、一番に浮かんだのは志貴皇子が詠まれた「みやびうた」CDにある『萌え出づる春』で、一緒に音楽(楽譜)も紹介したいと思い、勇気を出して歌枕さんにご連絡しました。
歌枕:すでに24年、本当に時の経つのは早く、古事記、日本書紀、万葉集と、生涯賭けてもすべてを作品にすることができないほどの大プロジェクトになりました。ずっと支え続けてくださり、ありがとうございます。
上島:リリースコンサート以降、私が各地でのコンサートに行く様になると、歌枕さんの万葉歌は次第に有名となり、公共自治体からの依頼コンサートや神社仏閣・庄屋屋敷・酒蔵など歴史的建造物でのコンサートも増えてきました。その間、歌枕さんの万葉集を聴き魅了された方々から「ファンクラブの様な会はないのでしょうか?」というお声を聞く様になりましたね。
歌枕:そして上島さんに、友の会の前身「歌枕直美の活動を応援する会」の会長をお願いに参りました。
上島:懐かしいですね。大勢の方々がご入会くださり、このように長く歌枕さんの活動と共に継続することができ、本当に有難く感謝申し上げます。
歌枕:それから「歌枕直美友の会」と名称を変更とともに、上島さんには名誉会長をお願いしました。しばらくの間会長不在でしたが、2021年1月より、歯科医師であり、私の芸術活動の意義を深く感じてくださっている竜門さんに「歌枕直美友の会」会長をお願いいたしました。上島名誉会長と共に、新しい風を吹き込んでくださると予感しています。
竜門:友の会には、素晴らしい先輩方がいらっしゃる中で、私が大役を仰せつかり、大変恐縮しております。上島名誉会長をはじめ皆様に、いろいろとご指導を頂きたいです。
上島:竜門さんという知性豊かな素敵な女性が登場し、「歌枕直美友の会」の会長に就任していただけるとのこと、素晴らしいと思います。
うたまくら茶論
竜門:ありがとうございます。職業柄、歯科医師としての務めの中で同業者の狭い世界で過ごしていたことを、うたまくら茶論 「やまとうたコンサート」で皆様に出会い、幅広い世界の体験談やお考えを聞かせていただき広がる会話の中で、より感じます。
歌枕:茶論では、年齢、職業関係なく、人間同士としてのつながりで、そのご縁は私の力になっています。
上島:歌枕さんの音楽、お人柄の魅力のもと集まる人々もすべて本物で、皆さんその時間を大切に感じ、満足しています。
竜門:初めて参加した時、お集りの皆様の素晴らしさと、歌枕さんの歌声が空気の振動で身体に伝わる・生で感じる・肌で感じ感動し、音楽と時代を越えた心を感じました。また、毎月の新作上演が楽しみです。
歌枕:来年は、「沖縄と万葉集」をテーマに上演する予定です。
上島:沖縄はエキゾチックで、その背景には中国やフィリピンとの歴史もあり、日本とは異なる魅力があります。
竜門:今、沖縄に妹が住んでいて、同じ日本と言えど、昔からの独特な文化や風習が遺っています。
歌枕:竜門さんに沖縄をご案内いただいたことで、とても刺激を受けました。今の沖縄を知ることで、古代の日本がわかると思っています。
上島:どのように万葉集と関わったお話になるのか、今からとても楽しみです。それから、うたまくら茶論のもう一つの魅力は、歌枕さんが参加者のために考えたお料理でもてなして下さることですね。気持ちが伝わります。
歌枕:ありがとうございます。いつもご参加いただける方のお顔を思い浮かべて、メニューを考えています。
歌枕:ありがとうございます。いつもご参加いただける方のお顔を思い浮かべて、メニューを考えています。
竜門:いつも旬の食材を生かしたお料理を美味しく頂いています。普段身近にある食材も、歌枕さんのアイデアで素敵な一品になり、彩りや盛りつけ、器も美しく、毎月楽しみにしています。
うつそみの人
歌枕:2020年は、コロナウィルス感染症のため、歴史に刻まれる年になりました。その中、世の中全体が新しい生活様式を余儀なくされ、芸術活動も規制された日々でしたが、秋には感染予防対策を考えた公演のあり方を見いだし、皆様にもご理解をいただき、京都・無名舎に於いて音絵巻「うつそみの人―細川ガラシャ」公演を行う事ができ、ありがとうございました。
上島:本当に大変な中での、音絵巻公演でしたが、とても豊かな時間を過ごすことができ、皆さん喜ばれていました。無名舎の様な素晴らしい日本建築の空間で、少人数制でのコンサート、このような贅沢な時間をすごせるのはコロナのお陰ですね。(笑)
竜門:贅沢な時間を過ごさせていただきました。太鼓の音からはじまり、どうなっていくのだろうとワクワクしている内に、歌枕さんの歌と語り、映像で物語の中にひきこまれ、自分自身もその中にいたような気持ちになっていました。障子越しに入ってくる光の感じや、鳥が飛んで行く影など、自然の営みがあいまって、大変感動しました。
歌枕:ありがとうございます。20代の時に、無名舎の御当主 吉田孝次郎先生の生活工藝へのお考えにふれ、そこが自分自身の原点となりました。そして病気からの復活作品として菅沼先生が考えてくださった公演形式「音絵巻」を無名舎で行いたいとお願いしました。そして四年目、今回の作品の音絵巻「うつそみの人―細川ガラシャ」は、無名舎周辺がある意味ご当地ということで、縁の深い場所での公演となりました。
上島:イエズス会教会の南蛮寺や本能寺が本当に近くにありますね。また、吉田先生のコレクションより、南蛮寺跡で発掘された硯の絵の版画や羊のなめし革に書かれたグレゴリオ聖歌の楽譜など、この作品の時代を思い起させる貴重なものの展示があり、素晴らしかったです。
竜門:学生時代、カトリックの学校だった事もあり、学校からみたガラシャしかなくて、一般から見た、社会から見たガラシャを考える事もありませんでした。この作品の中に、お坊さんの意見も出てきて、いろんな見解があると、大きく考える事ができました。ガラシャが生きた時代、新興宗教であるキリスト教が入ってきて、父・明智光秀のやったこと、夫の立場、ガラシャの家を守るという信念など、改めて考える事ができました。
上島:父が謀反人であり、複雑な境遇の中で心のよりどころとして選んだのが、当時新興宗教だったキリスト教で、本当にそれでよかったのかなと、いろんなことを思いめぐらしました。無名舎でこの作品を見せていただく事は、時代も空気感もタイムスリップし、こんなにもいろんなことを感じる事ができると思いました。映像、物語、歌枕さんの歌、狂言回しのような赤人、その掛け合いが絶妙で素晴らしく、音絵巻「うつそみの人―細川ガラシャ」は、歌枕さんの代表作となりましたね。ぜひ各地で公演を行って下さい。
竜門:来年春の再演は、歌枕さんの曲「みをつくし」のご当地である浜松・宝林寺でも開催されますね。宝林寺様の紹介動画でも曲が使われていて感動しました。ぜひ行ってみたいと思いました。
歌枕:コンサートにおいて、皆さんにお目にかかれることを、楽しみにしています。これからもどうぞ宜しくお願い致します。
竜門 陽子(りゅうもん ようこ) | 一九七二年大阪生まれ。一九九六年神奈川歯科大学卒業。一九九九年竜門歯科北池田診療所開業。現在に至る。和泉市歯科医師会 常務理事。大阪府学校歯科 食育委員会委員長。 |
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